男爵いもやメークイン、新じゃがいも以外で見かけるようになった新品種のじゃがいもを調べてみました。
外食メニューやお惣菜売り場でも、新品種のじゃがいもを使った料理を見かけることが増えてきました。
新品種のじゃがいもを知るにつれて、品種改良って、ただ単に品種を増やすだけじゃなくて、しっかりと意図があってのことなんですね。
かけ合わせって私たちが考えている以上に、複雑で何度も試行錯誤が必要。
いまや何十種類もある、じゃがいもの歴史と進化を感じます。
きたあかり
きたあかりは、北の大地を線虫(じゃがいもに侵入する害虫)被害から守る希望と明るさを表現して名づけられました。
この線虫に抵抗性を持つように、男爵いもと線虫抵抗性の品種のツニカ(Tunika/ドイツ)を交配させたものです。
売場や飲食店でよく見かけるようになりました。
栗のような甘みがあり「栗じゃがいも」と呼ばれる人気の品種。
形
きたあかりは、表側は男爵いもに似て丸くてごつごつしていますが、芽のくぼみは男爵いもよりも浅いので皮はむきやすいです。
表の皮は男爵いもよりも荒いため、見た目は味に反比例してイマイチ感ありです。
中身・質
中身はメークインよりも黄色が濃く、甘みが強くホクホク感があります。そして、さつまいもに似たいい香りがします。
男爵いもを継承している粉っぽいタイプのため、煮くずれしやすいので加熱時間は短めに。
きたあかりは男爵いもよりも煮あがりが早く、男爵いもよりもやや煮くずれしやすいので、男爵いもよりもホクホク感や甘みが強く感じられます。
保存期間が長くなると粉質度が落ちていくので、ホクホク感は低下していきますが、糖が増加し、甘みが増します。
栄養面はビタミンCが豊富です。
料理法
ポテトサラダ、お味噌汁、炒め物、ポタージュに向いています。
甘みが強いキタアカリは糖度が高く、揚げ物にするとこげやすい。
しかし、甘みのおかげでおいしい。
電子レンジで調理すると煮くずれの心配が少ないです。
レンジ調理は、キタアカリの濃厚なあじわいや香りを失わずに済みます。
じゃがいもをある程度加熱して余熱で中まで火を通すことで、煮くずれを防ぐことができます。
インカのめざめ
インカのめざめは、アメリカ品種のじゃがいもを日本で栽培しやすいように品種改良されたじゃがいもです。
【余談】くわしくは…アンデス(南アメリカ方面らしい…)地域で栽培されていた独特のあじわいの品種Solanum phureja(ソラヌム フウレヤ)とアメリカ品種「Katahdin」を交配して育成されたじゃがいもに、「P10173-5」(中身が濃黄)という選抜されたじゃがいもの種を交配したもの。
「インカのめざめ」すごいネーミングですが、どこを調べても「起源地と新しさを例えて命名」とのこと。
起源地はアンデスのことだと考えられます。そのアンデス文明のあとにインカ帝国が建てられたこと、新しさを表現するめざめを組み合わせて命名されたのではないかと、私は勝手に考えて納得しております…。
インカのめざめの仲間に「インカルージュ」「インカのひとみ」があります。
「インカルージュ」
インカのめざめの変異形で、皮の色が赤色系。栗のような甘み、濃厚さを継承。
「インカのひとみ」
インカのめざめの中から選抜された品種。小粒で濃厚な甘みやなめらかさはインカのめざめ譲り。
形
比較的小ぶりと言われており、1個が約50~70gほど。
Lサイズ(150~250ℊ)以上のインカのめざめには、中が空洞であったり、黒くなっていたりかびが生えていたりの異常が見られるようで、インカのめざめは、大きく成長しないのが普通だそうです。
外見は卵型ですが、芽のくぼみは浅く、男爵いもよりもくぼみは少ないです。
中身・質
だいだい色寄りの鮮やかな黄色。
インカのめざめは、皮をむいた後や加熱後も変色はほとんどなく、きたあかりよりもさらに濃い、くっきりとした黄色を保つ。
きめが細かく、やや粘質(粉質と粘質の間くらい)、かなりなめらかな舌ざわりで煮くずれしにくいです。
甘みが強く栗のようだと言われています。甘みにばらつきがあることもあり、じゃがいもとさつまいもの間くらいのあっさりした甘さのように感じる時もあるようです。
どの情報も、甘みが強く、栗やさつまいものようにねっとりとしたおいしさと表現されています。→どうやら春先に熟成されたインカのめざめは、さつまいもに近い甘さになるとのこと。
その甘さは、きたあかりをかなり上回ります。
収穫量は少なくて発芽までの期間が短く、芽が出やすい。収穫が遅れると土の中でも芽が出てしまうので、長期間の保存は難しい品種です。
男爵いものように貯蔵が効かないので、ひとむかしはあまり出回っていなかったのですが、最近ではスーパーでも見かけることが増えてきました。
調理法
煮くずれが少ないので、シチューやカレーに。
インカのめざめは、どのお料理にも幅広く使える万能選手です。
揚げ物や炒め物には、インカのめざめの鮮やかな黄色みがきれいなまま、お料理が完成します。
甘みは強いですが、油で揚げても茶色くなることは少ないです。
鮮やかな黄色と甘みを活かしてふかして食べたり、お菓子の材料にも適しています。
とうや
早生大粒食用(貯蔵をあまりしないで出荷する大粒タイプのじゃがいも)の耐病害虫品種の育成を目標に交配、選抜されてきたものがとうやです。
主な産地は北海道道南の洞爺湖で、その洞爺湖から「とうや」と名づけられました。
中身が黄色で、気品あるあじわいから「黄爵(とうや)」の表記で出荷されていることもあります。
芽が早く出て早く成長するので貯蔵が効かず出荷は早めで、8月頃から出荷されているじゃがいもです。
形
大きく育っており丸い。芽が少なくてくぼみは浅く、皮がむきやすい。
中身・質
中は黄色(新品種は黄色が多いですね。)
やや粘質のため、皮をむいた後や加熱後も変色はほとんどなく、煮くずれが少ない。
メークインに似てなめらかな舌ざわりなので、ホクホクは感じられません。しっとり感で選ぶなら、とうやが理想と言われています。
この「とうや」包丁で切るとわかるのですが、本当にじゃがいもがやわらかくてしっとり切れるといった感じ。切る時の感じが、サクッサクッという感じではないのです。
切り口にもジワッと水分が出ています。
でんぷんが少ないので、カロリーも少な目です。
甘みが強いので、揚げ物にすると茶色になりやすい。
光に当たると緑化しやすいので、光を遮っての保存が必要です。
【関連】じゃがいもの緑化とは?
調理法
煮込み料理、サラダ、和え物、炒め物にも適している。フライドポテトには不向き。
マチルダ
農協の連合会であるホクレンがスウェーデンから導入したのがマチルダで、芽室町だけで栽培されており、かなり希少。
マチルダの呼称は、豊作・貴婦人の意味を示すため女性の名で表されています。
減農薬栽培が可能なじゃがいもです。
形
小ぶりで卵型。皮が厚く、手に取るとキウイフルーツのような感触でざらざらしています。
皮は厚いですが、卵のからをむくように簡単に皮をむくことができます。
中身・質
粉質だが、ホクホク感となめらかさの両方を持ち合わせています。
調理法
ポテトサラダ、コロッケ、マッシュポテトなど。味が淡白なので、しっかりと味を効かせるのがポイント。乳製品と相性がいい。煮くずれは激しい。
北海こがね
北海道でフレンチフライ用品種(フライドポテト用)として育てられ、フライの色が黄金色であることから「北海こがね」と名づけられました。
形
長楕円形でメークインよりもやや細め。表面はなめらかで芽も浅い。
中身・質
中身は黄色で粘質。調理した後の黒や茶色への変化がない。メークインよりもさらに煮くずれしないので、じゃがいもの中では万能でさまざまな料理に使える。
糖分も少ないので、揚げたときもこげにくい。
調理法
フライドポテト、ポテトチップス、煮もの、
でんぷん質を多く含むため、水っぽさも少なくサラダにも向く。
レッドムーン
形
名前の通り、見た目がレッド、赤いです。土がついている時は赤い表面はあまり目立ちませんが、洗うと赤っぽいのがわかります。
さつまいものような赤っぽさです。
皮はけっこう固めでピーラーを使って皮をむいても少しむきづらい感じ。
くぼみは少ないです。
中身・質
皮をむいてカットしたレッドムーン。
中身の見た目は男爵などと変わりありません。
口あたりがなめらかですが、ホクホク感が若干あります。きたあかりやインカ類のような強烈な甘さはありません。
レッドムーン保存での注意!
じゃがいもは通常は冷蔵保存しないのですが、このレッドムーンは冷蔵保存です。常温保存だと、芽が出るのが早く、レッドムーンの控えめな優しい甘みが減ってしまうので気をつけましょう。
調理法
水分が比較的多めなので、食感を残した炒め物に。
煮くずれしにくいので、煮込み料理にも向いています。レッドムーンは粘質なので、つぶすと粘りが出て食感が悪くなります。
レッドムーンは水分多めなので、素揚げには向きません。
どうしても揚げ物にする場合は、衣をつけて水分の流出を抑えると、水分による油ハネがなく、ほろっとした優しい食感のフライレッドムーンになります。
【じゃがいもの種類(新品種)きたあかり・インカのめざめなど】まとめ
◆きたあかり…粉質(ホクホク感あり。煮くずれしやすい)
◆インカのめざめ…粘質(なめらかな舌ざわり。煮くずれが少ない)
◆とうや…粘質(かなりなめらかな舌ざわりでしっとり感あり。)
◆マチルダ…粉質 (なめらかさとホクホク感の両方あり)
◆北海こがね…粘質(煮くずれほぼなし。ねっとりとホクホク感の両方を持つ)
◆レッドムーン…粘質(煮くずれしにくく、しっとりとして滑らかな口あたり)
このうち、レッドムーンを除く上記5種は、どれも甘みが強いです。
インカのめざめについては…
さつまいもやないか!! とフライドポテト好きの娘は残しました…。
新品種はどんどん開発されていくので、ここに載せきれていないものがたくさんあります。
新品種に出会ったら、手に取って試してみたいと思います。
どのじゃがいもも、それぞれのおいしさがあります。
じゃがいもを何も味をつけず、ゆでただけ、揚げただけの状態で食べると、じゃがいもそのものの味を楽しめ、「うまい!!」とさけんでしまいます。
毎日の食事…「 今日もいのちをいただきます。毎日食べられる幸せに感謝 」